酒田醗酵のどぶろく 美味しさの秘密「蒸米」編

酒田醗酵のどぶろくは、単なるお酒ではありません。
それは、創業当初からの「吟醸造り」の精神が息づいている、まるで職人の手によって育まれた芸術品のような存在です。
こだわりポイント:酒造好適米の特性
まず、使用するのは酒造好適米です。
普通の米とは一線を画す、これを選ぶ理由は一目瞭然です。
これらの米は、酒作りに最適化されるよう品種改良されており、ただの米ではなく、まるで専用の楽器のように酒造りに寄り添います。
- 一般的な食用米と比べて米粒が大きく、精米時に砕けにくい
- 心白(しんぱく)と呼ばれる白い中心部を持つ
この心白が麹菌の働きを助け、より豊かな香りと奥深い味わいを生み出します。 - タンパク質や脂質が少なく、雑味が少ない
- 吸水性が良く、保湿性が高い

山形県は米作りと酒造りが盛んな地域であり、「出羽燦々」や「出羽の里」、最新の「雪女神」などの優れた酒造好適米が開発され、山形の酒の品質を支える重要な要素となっています。
蒸米の工程:米の旨みを引き出す重要なステップ
どぶろく造りにおいて、「蒸米」は単なる下準備ではなく、味わいを決定づける重要な工程です。
(正式には蒸きょう[じょうきょう]という工程になります)
蒸米の状態次第で、その後の麹造りや醗酵の進み方が大きく変わります。
酒田醗酵では、より香り高く旨みのあるどぶろくを生み出すため、この蒸米の工程にも特別なこだわりを持ち、工夫を重ねています。

ストーリー(1):蒸気に包まれた吟醸コシキ

吟醸コシキが米を蒸している作業場は蒸気で真っ白に包まれています。
まるで雲の中にいるかのような幻想的な光景の中、蒸し上がりの瞬間が訪れます。
蒸気が晴れると、そこには輝く酒米が姿を現します。まさに光り輝く宝石のような瞬間です。

理想的な米の状態を作りたい
蒸米を作る目的は、単に米を柔らかくすることではありません。
酒造りに適した米の状態を作ることが求められます。
- 表面はしっかり、芯は適度に柔らかく
- 麹菌が繁殖しやすい状態を整える
- 醗酵時に糖化がスムーズに進むようにする
酒造りでは、米を炊くのではなく蒸しています。
外側が適度に硬く、内側は軟らかい、「外硬内軟(がいこうないなん)」な仕上がりが理想的です。
これが大切な理由は、糖化や発酵には時間をかけたほうが、深みのある味わいのお酒ができるからです。
もし米がすぐに崩れてしまうと、発酵がうまく進まないのです。
また麹作りにも、米が柔らかすぎると麹菌が表面に広がりすぎて、十分な力を発揮できません。外側が硬く内側が柔らかいと、菌糸が表面に広がるのを防ぎ、内側に向かってしっかりと伸びていきます。これによって、元気な麹が育ちます。
どぶろくの製造には、麹がしっかりと働き、米の旨みを十分に引き出すことが求められるため、蒸しの加減が重要になります。
吟醸甑の導入:均一な蒸しを実現
従来はせいろを使って蒸していましたが、この方法では蒸しムラが発生しやすく、均一な蒸し米を作るのが難しいという課題がありました。
そこで、より理想的な蒸し米を実現するために、思い切って乾燥蒸気用のボイラーを設置しました。
ボイラーは水を加熱して高温の蒸気を発生させる装置で、これにより安定した強い蒸気を供給できるようになりました。
さらに、この蒸気を効率的に活用するため、吟醸甑(こしき・蒸し釜)を導入し、米の芯までムラなく均一に蒸し上げる環境を整えました。
この設備投資は決して簡単なものではありませんでしたが、酒田醗酵のどぶろくをさらに深い味わいにするためには欠かせないものでした。


むす蔵くんです。(これ、名前です。ついつい愛着が湧いてきませんか?酒田醗酵に一度いらしたことがある方ならご存じの方も多いかもしれませんが、弊社の醸造機器にはそれぞれ名前がついていますので今後も色々とご紹介いたします。)
このプロセスを助けてくれるスーパーヒーローのような存在です。
酒田醗酵の醸造機器の中でも特に活躍しており、均一な蒸し上がりを可能にしています。
吟醸甑は、
- 蒸気を均一に行き渡らせる
- 米粒がベタつかず、適度な硬さを保てる
- 余分な水分を飛ばし、香り高い蒸米を作れる
といったメリットがあり、より安定した品質の蒸米を得ることができます。

蒸米のこだわりポイント
蒸しの工程では、「温度」と「時間」のわずかな違いが仕上がりを大きく左右します。例えば、
- 蒸し時間を短くすると、米の芯が残りすぎて糖化がうまく進まない
- 蒸し時間を長くすると、米がベタつき、麹菌が米の中まで均等に繁殖しにくい
そんな微妙な調整を何年もの経験をもとに、毎回ベストな仕上がりを目指して調整しています。
ストーリー(2):蒸し時間の絶妙な調整
蒸し時間をほんの数分短縮しただけで、味わいに大きな変化が現れることがあります。
細かい調整の積み重ねが、酒田醗酵のどぶろくを唯一無二のものにしています。

吟醸造りを踏襲しつつも、蒸米の硬さや水分量については、さらなる品質向上を目指し「ふくよかな米の旨みと、キレのある後味」を持つどぶろくに適合した仕上がりになるように、細かく検証しながら日々改良を重ねています。

ストーリー(3):放冷作業の緊張感
次に、蒸し上がった米の重量を計り、放冷作業に入ります。この作業は放冷台で行われ、米が適温に冷まされます。
蒸し上がった米の温度や水分量にも細心の注意を払います。
米の感触や弾力を確かめながら、五感を研ぎ澄ませて向き合う、緊張感のある瞬間です。
ちょっと手を抜くと「うーん、なんだか違う!」と感じる仕上がりになってしまいます。
用途によって行き先が変わり、麹米は種切をして製麹作業へ、掛米はどぶろくのタンクに送られていきます。
酒田醗酵のどぶろくを支える蒸米の技術
どぶろくの味わいに直結する「理想の蒸米」を実現するためにこうした工夫を積み重ねています。
シンプルな工程のように思われがちですが、実際には微妙な調整と職人の経験がものを言う奥深い作業です。
酒田醗酵のどぶろくを口にした時に、ふんわりと広がる米の甘みや奥深いコクを感じられたら、それはこの「蒸しの工程」が生み出した味わいの一部なのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今後、製造現場のこだわりを詰め込んだ特集ページを順次公開していく予定です。
これからも、私たちのどぶろく造りのこだわりをお伝えしていきますので、どうぞお楽しみに!